12/04/2008

 四葉のクローバーが、死ぬほど生えている公園があった。
 教えてくれたのは、たこ焼き屋のオヤジ。オヤジの焼くたこ焼きが大好きで、足繁く通ったものだ。オヤジがたこ焼きを焼いてる間、お互いに無言で、たこ焼きがパックに詰められるまでの時間を待つって数ヶ月が過ぎたある日のこと、膨大な量の四葉のクローバーの押し花(押し草?)を見せて貰った。これだけの四葉のクローバーを集めるのは相当の苦労だったでしょうって言う僕に、オヤジがそんなことはないって教えてくれたのがその公園。散歩がてらに四葉のクローバーを一日一本摘んでは押し花にしてるって話だった。
 当時学生だった僕は次の日の帰り、早速その公園を訪ねて、四葉のクローバーを一本摘んで、押し花を初めて作った。重厚な装丁の「日本国憲法」のテキストは、まだ僕の本棚の隅にあるけど、押し花作りには大活躍した。押し花で、しおりを作ったし、その公園には藤棚とベンチがあって天気のいい日には、大学に行かずに、そこで本を読んで過ごしたりもした。散歩中のオヤジとも会ったりした。
 僕が大学を卒業する頃に、オヤジは身体を壊してたこ焼き屋を閉めてしまった。僕も大学を卒業して、地元から離れていたし、地元に帰ってきてからも、その公園に足を運ぶ、余裕がなくなっていた。
 今年の4月、職場が変わった。その公園の近く。懐かしく思って、ふとその公園を訪れてみた。四葉のクローバーが群生していた場所は、黄色い金網が張られ、何が作られるんだか、工事をしているようだった。藤棚とベンチは位置が移動していて、建物の陰になっていた。オヤジのたこ焼き屋辺りはびっくりラーメンになっていたけど、その屋号は最近変わった。まだラーメン屋なんだろうか?たこ焼き屋の体格のいいオヤジはどうしてるんだろう?
 四葉のクローバーが死ぬほど生えている公園があった、ホントにあったんだって言っても、もう信じてもらえないかもしれない。
 「日本国憲法」のテキストを開いて文面に目を走らせた。

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