司法修習生に支払われている給与を打ち切ることに、民主党の法務部門会議が、突如として「待った」をかけた。
修習生や、給与の存続を訴えていた日本弁護士連合会にとっては朗報だろう。
だが、一度は打ち切りに賛成した民主党の場当たり的な方針転換には疑問符が付く。
司法試験に合格し、法律家になるために研修を積んでいる司法修習生には、国庫から毎月約20万円の給与が支払われてきた。
修習生は公益性が高い法曹になることから、国が生活資金を含めて丸ごと支援し、養成するという理念の下、戦後一貫して続いてきた「給費制」という制度だ。
だが、法曹人口の大幅増を掲げた司法制度改革の中で、2004年、これに代わって「貸与制」の導入が決まった。法曹の増加に伴い、過度の財政負担が避けられないとの理由からで、当時、野党だった民主党も賛成した。
1年間の修習期間中に月18万~28万円を無利子で貸し、修習生は10年間で分割返済する。修習終了後、5年間は返済を猶予する。貸与とはいえ、かなり有利な内容の制度だ。
その移行が11月に迫ったところで、突然、議員立法で阻止しようというのである。
日弁連は、「修習生の半数が奨学金などの借金を抱えており、貸与制になれば、さらに借金が増える」「富裕層しか法曹になれない状況を招き、志望者が減る」と、給費制の維持を求めてきた。民主党がそれに応じた形だ。
だが、根本的な議論抜きの強引な「存続」に、国費の負担者であり、かつ法的サービスの受益者である国民は納得するだろうか。
裁判官、検察官はともかく、民間人である弁護士になる修習生にも国が一律に給与を支払う必要があるのか、という疑問の声が以前からあったのも事実だ。
今の司法修習制度のあり方を含め、法曹養成全体の大局的見地に立った根本議論なしに、ただ給費制か、貸与制かという二者択一の議論に固執していては、混乱の真の解決には至らない。
過疎地で業務に励んだ弁護士には、貸与金の返済を免除するといった折衷案も考えられよう。
新司法試験の合格率は低迷し、法曹人口は計画通りに増えていない。財政事情は極めて厳しい。
こうした様々な要因を踏まえつつ、良質な法曹養成と法的サービスの向上につなげる視線から議論を尽くすことが肝要だ。
(2010年9月21日01時14分 読売新聞)
不勉強で、この「民主党の横槍」については知らなかったんだけど、分かり易過ぎる展開だなぁと。
まぁ、弁護士の利権集団だもんなぁ、民主党は。
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