早期敗退のオランダとフランスに共通する問題とは
2012/06/27 15:00:00
2010年6月25日、オランダ代表は荷物をまとめてケープタウンを後にした。グループEの3試合で勝ち点9を獲得した彼らはダーバンへと向かい、最終的にW杯決勝まで続くことになるトーナメント戦の道のりをスタートさせた。
そのちょうど2年後、副キャプテンのラファエル・ファン・デル・ファールトは自身の近況をツイッターで世界中に発信していた。「(妻の)シルヴィーと一緒に、気候のいいサン・トロペでゆっくり過ごしているよ」と。
24カ月前には、彼らはまだ本格的な戦いをようやくスタートさせたところだった。今ではオランダ代表はとっくにEURO2012から姿を消している。今週の準決勝に注目が移る一方で、すでにオランダのスター選手たちは家族とともにビーチを満喫している。チーム内で様々な騒動が相次いだオレンジ軍団は、最終的にグループステージで3戦全敗という結果に終わった。
しかも『Voetbal International』の報じたところによると、このままベルト・ファン・マルヴァイクが監督にとどまるのであれば、今月のウクライナでプロフェッショナルらしからぬ言動を見せたファン・デル・ファールトは敗退の罪をかぶせられる選手の一人となりそうだ。クラース=ヤン・フンテラールとファン・デル・ファールトは、本大会でベンチに座らされたことでチーム内に不和を発生させた。その代償は高くつくことになるだろう。同じく、不機嫌な態度を見せたグレゴリー・ファン・デル・ヴィールとアリエン・ロッベンも切られることになるかもしれない。
トータル・フットボールだけでなく、こういった内紛もオランダのお家芸だ。フランスにも同じことが言える。土曜日の準々決勝でスペインに敗れて大会を去る前に、ローラン・ブラン監督はグループD最終戦のスウェーデン戦に敗れたあとチーム内にゴタゴタが発生したことを認めていた。
キエフでの試合に2-0で敗れたあと、ロッカールーム内でアルー・ディアラとサミル・ナスリが衝突。ナスリはこれ以前にも、フランスのメディアと口論を起こしていた。 「言葉のやり取りがあり、それに対するリアクションがあった」とブランは語る。「我々のチームは様々な困難を抱えていると思う。監督の仕事が簡単ではないことは、我々が誰よりもよく知っている。我々はチームを作ろうとしているが、今でも心の中に悪魔を抱えた選手たちは多い。誰もが2010年のW杯で起こったことを思い出している。2、3回声を荒げるだけで、またそれが再現されるのではないかと人々は不安を感じている」
2010年の心苦しい敗戦とその後の罪の擦り合いを経て、レイモン・ドメネクからチームを引き継ぐのは決して簡単なことではなかっただろう。だが、著名なサッカージャーナリストのサイモン・クーパー氏によれば、現在のレ・ブルーが抱える病巣はそれだけではないという。
「フランスに関して言えば、特に若い世代が自分たちを強く表現したがっていると思う。肌の色にまつわる問題も色々と起こっており、若者は必ずしも白人の中年男性の指示に耳を貸そうとはしない」とクーパー氏は語る。「今フランス代表チームに起こっていることの中で、この点はあまり目を向けられていない部分だと思う。ローラン・ブランのような白人中年男性と、フランスの都市郊外の民族居住地域で育った若い選手たちの間には、コミュニケーションギャップが存在する。ほとんど別の言語を話しているようなものだ」
『サッカーの敵』や『アヤックスの戦争』などの名著のあるクーパーは、サッカーの国際舞台においては、特に歴史的に創造性を特徴とするサッカー文化が絡んでくる場合、この手の問題が発生しやすいと考えている。
「不和や衝突を、誰も完全に根絶しようとはしない。もしやったとしても、そこからあまり良いサッカーが生まれることはないだろう。仲間とうまくやれないような傲慢な選手たちがいても、タイトルを獲得したチームもある。争い好きな選手たちがいたり、チーム内に不和が発生したとしても、必ずしもそれがチームの終わりを表すとは限らない」
「だが多くの国において、選手たちはサッカーの質を上げるために考えることを求められ、創造性を持つことを奨励されている。しかしそれは、衝突が起こる可能性が高まることを意味している。たとえばある左サイドバックが、機会があるたびにあと10ヤード前へ出る必要があると決めたらどうだろうか。選手が何かをしたり、何かを言った結果として衝突が起こる可能性もある」
国際サッカーというのは非常に厳しい環境だ。選手たちは一定期間ずっと一緒に過ごすことになる。また、色々なことについて自分のやり方でやることに慣れた選手たち、たとえばクラブではセットプレーのキッカーの一番手であったりする選手が、代表チームではそういう選手が5、6人いる中のひとりだったりすることもあるだろう」
だが、2006年のイタリアのような例はどう見るべきだろうか? 国内ではカルチョーポリ・スキャンダルが発生していたという事情にもかかわらず、チームの団結力こそがW杯優勝の鍵となった要素の一つだと称えられた。
「2006年のイタリアは単純にすごく良いチームだったと思うし、W杯の試合に勝てば当然チームの精神状態は良くなるものだ」とクーパー。「私は良い精神状態が良いパフォーマンスを生むとは思わない。良いパフォーマンスが良い精神状態を生むのだ。このケースのように、敵が外部にいた方が戦いやすいものだ。だがサッカーのチームにおいて、メンタルの要素は過大評価されていると感じられる」
「精神状態は勝てば良くなるし、負ければ悪くなるものだ。そうなると、『チームが負けたのはお前のせいだ』などと誰もが言い出すことになる。オランダ代表の精神状態が悪いと言われていたし、実際に悪かったのだろうが、それは試合に負けていたからこそ悪かったのかもしれない」 ポイントはまさにそこにある。W杯決勝まで勝ち進んだ2010年には、オランダ特有の問題が露呈することはなかった。だが今大会では、デンマークとの初戦に敗れるやいなや、すぐに亀裂が見え始めた。フランスが初戦に敗れたあとの様子も同じようなものだった。
創造的な思考と表現の自由があれば、そこには違いを見せられる能力も生まれるし、大混乱を引き起こす可能性にも繋がる。サッカーの国際舞台はいつもそんなものだったし、今後もそれは変わらないだろう。
次回のW杯で優勝チームを予想しようとうするなら、ブックメーカーが最初に内紛を起こすチームについての賭けを受け付けているかどうか確認してみるといい。「起きるかどうか」ではなく「いつ」起きるかの問題でしかない。
文/クリス・ヴォークス
以前ならスペインもこのカテゴリーだったんだけどね。
1998年のフランス大会に臨むに当たってフランス代表はカントナやジノラといった選手を外し、デシャンというキャプテンを擁して2年後のユーロをも制してしまったのは記憶に新しいし、メジャー大会で成功したオランダの監督はあのミケルスだった。オランダ代表といえば1998年W杯でも試合に勝った後に選手同士が乱闘をしていたぐらいだ。
クーパーさんが語るように、不和が発生したとしてもチームの終了を意味しないし、そういった中でも光るプレーを見せる選手がいることも確か。
でも、競技レベルはそれほど高くない(あくまで男子との比較で)女子W杯が世界中の人々を感動させた事実が何かを物語っているのかもしれない。
もちろん問題の根はもっと深いのだけど。
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