05/06/2010

舞い上がってるなぁ

 麻生内閣の成立時には「選挙管理内閣」だって大々的に報じられたもんだけどね。

社説:菅直人新首相 政治立て直す指導力を (毎日jp)

 菅直人新首相が誕生した。迷走を極めた鳩山内閣が9カ月足らずで退陣し、民主党の政権担当能力への国民の信頼が大きく揺らぎ、2度の失敗が決して許されない中で国政のかじ取りを担う。
 前政権の失敗を踏まえ政権の性格が変わったことを示すためには小沢一郎前幹事長との二重権力構造を招かない体制を構築し、組織優先でバラマキ型に陥った悪弊を改めることが必要だ。危機的状況にある財政再建、揺らぐ日米関係の再構築など内外の諸課題で責任ある方策を掲げ、来る参院選で国民の審判を仰がねばならない。
 ◇「脱小沢」を徹底せよ
 「日本の行き詰まりを打破したい」。菅氏は国会での首相指名後の記者会見で難局にあたる決意を強調した。だが、人事、政策については総じて慎重な言い回しに終始した。
 今回、民主党代表選の焦点は、鳩山由紀夫前首相と共に役職から身を引いた小沢氏の影響力排除をどこまで示せるかにあった。菅氏の貫禄勝ちだったとはいえ、小沢氏と距離を置く姿勢を明確にしたうえで樽床伸二衆院環境委員長に圧勝した意味は大きい。最大勢力である小沢氏系グループがキングメーカーとなる構図は幻想だったとすら言える。
 とはいえ「脱小沢」の明確な指標は、党の要の幹事長人事だ。小沢氏と距離を置く枝野幸男前行政刷新担当相の起用を検討している模様だが、仮に小沢氏への配慮から見送るようでは政権の足元を見られよう。
 国会で首相に指名されたにもかかわらず、組閣を来週に先送りした対応も異例だ。体制構築にある程度の日数をかけることはやむを得ないが、危機管理上、本来は首相指名選挙も延ばすべきではなかったか。
 菅氏に求められるのはトップの言動への信頼を回復するリーダーシップの発揮である。市民運動からスタートし、さきがけなどを経て旧民主党結党に参画した菅氏は非2世議員で、自民党に所属した経歴も持たないという近年の首相にないユニークさを持つ。ここ数代、ひ弱で資質が問われたリーダーたちとは異質のしたたかさを期待したい。
 だからといって、国民の菅氏を見る目が決して温かいわけではあるまい。鳩山内閣の副総理としても存在感を発揮したとは言い難い。かつて厚相として「薬害エイズ」に切り込んだ改革者のイメージを取り戻すには、前政権の路線継承を強調するだけではいけない。政策や政権運営の見直しを果断に進めねばならない。
 組織票対策があらゆる政策課題に優先したかのような選挙至上主義を捨て、開かれた党運営に改めることが大切だ。「政治とカネ」の問題も真に政界の浄化を目指すのであれば小沢氏らが説明責任を果たすことはもちろん、企業・団体献金の全面禁止など結果を見せねばなるまい。
 「脱官僚」の政治主導が機能しなかった総括も必要だ。政治家と官僚の役割分担を整理し、意思決定をスムーズに行う仕組みを再構築すべきであり、菅氏が会見で官邸体制の再構築に言及したのは理解できる。鳩山内閣では首相が政務、小沢氏が党務を分担する仕組みが機能せず混乱した。政権交代と同時に廃止された党政調を復活させることも賛成だ。
 ◇責任ある公約示せ
 内外の政策課題でまず直面するのが政権崩壊の要因となった沖縄・普天間飛行場の移設問題である。菅氏は辺野古沖に移設する日米合意を踏襲し、沖縄の基地負担軽減に取り組む姿勢を示した。だが、沖縄県や名護市の同意が得られるめどは立っていない。その一方で、8月末に工法など具体案の策定を迫られる。
 仮に調整に失敗すれば普天間飛行場の固定化という最悪のシナリオを招きかねない。当面の危険除去の検討を急ぐことはもちろん、首相自ら早期に沖縄に行き、失われた信頼関係の構築を急がねばならない。
 財政も危機的状況にある。菅氏はこれまで消費増税積極論者だったが鳩山前首相の「消費税4年据え置き」との方針を果たして見直すのか。指針を示さなければ、責任ある政治とは言えまい。
 その意味で、重要なのが参院選で有権者に示す党の公約だ。さきの衆院選で掲げたマニフェストはバラマキ型の内容ですでに財源の骨格が破綻(はたん)している。誤りは率直に国民に謝罪したうえで、実現可能なプランを示さねばならない。
 参院選は本来、鳩山内閣の中間評価の場となるべきだった。菅氏が小沢氏と距離を置けばその分、9月に任期満了を迎える代表選のハードルは高くなる。参院選である程度の結果を示せなければ政権運営が立ち行かなくなる事態も十分にあり得る。そうなれば民主党の政権担当能力が今度こそ問われる。
 一方で、自民党など野党も戦略の練り直しを迫られる。逆風が吹く鳩山内閣の下での参院選突入を本音では期待していた向きもあった。だが首相交代を受け、単純な与党批判から一歩踏み込んだ政策論争が選挙戦で求められよう。
 鳩山前内閣の混乱と挫折を決して無駄にせず、教訓として生かすべきだ。それは、与野党が共通して国民に負う責務である。
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毎日新聞 2010年6月5日 東京朝刊
 こっちも

菅新首相誕生―「市民」の力量が試される (社説@asahi.com)

 歴史的な政権交代を選んだ民意に、今度こそ応えることができるのか、極めて重い責任を引き継いだ。
 民主党の新しい代表に菅直人・副総理兼財務相が選ばれ、衆参両院の本会議で新首相に指名された。
 菅新首相の登場には、昨年の政権交代にひけを取らないくらいの歴史的な意味合いを読み取ることができる。
 新首相を表現するキーワードは、「市民」である。
 団塊の世代に属する菅氏は学園闘争や「市民運動」を経て政界入り。婦人運動で知られる故市川房枝氏を参院議員に担ぎ出したことで知られる。
 ■「田中派」の系譜絶え
 1996年、鳩山由紀夫氏とともに旧民主党を結成したときのキャッチフレーズも、「市民が主役」だった。
 地縁血縁、企業や団体を集票基盤としてきた自民党は「抽象的な幽霊」(中曽根康弘元首相)などと「市民」を目の敵にしたが、十数年を経て、そのトップランナーが首相に上り詰めた。日本政治の新たなページである。
 菅氏は普通のサラリーマン家庭に育った。過去4代、そろって1年前後で政権を放り出してしまった安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山の各氏は、いずれも首相経験者の子や孫だ。
 戦後の歴代首相は政治家一家の出身者か官僚出身者が大多数であり、この点でも極めて異色の出自といえる。
 鳩山氏、小沢一郎前幹事長の「ダブル辞任」と菅氏の登場は、「政治は数、数は力、力は金」という自民党旧田中派、旧竹下派の系譜が完全に断ち切られたことも意味する。
 鳩山氏は早くから「クリーンな政治」を掲げた政治家だが、もともとの出発点は旧田中派である。その嫡流だった小沢氏とともに、政権交代後も「政治とカネ」の問題にまみれたのは歴史の皮肉な巡り合わせだった。
 菅氏の現実主義者の側面も見逃せない。民主党を政権を狙いうる政党にするため自由党との合併を実現した。
 ■のしかかる日米合意
 今回の代表選は本来、鳩山政権の失政を総括し、民主党が出直しの足場を固める機会だった。ところが、鳩山首相の退陣表明のわずか2日後に実施するという拙速ぶり。そんな選挙戦を通じ「世代交代」を訴えた中堅の樽床伸二衆院議員より、厚相として薬害エイズ問題に取り組んだ実績や党代表を2回つとめた経験のある菅氏が選ばれたのは、当然の結果ともいえるだろう。
 菅政権に立ち止まっている余裕はない。沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設をめぐる迷走で揺らいだ日米関係の再構築は差し迫った課題である。
 副総理として内閣の要にいた菅氏はこの問題にだんまりを通していたが、これからはそうはいかない。名護市辺野古への移設を決めた日米合意と、これに猛反発する沖縄の民意がさっそく重くのしかかる。事態打開への戦略と陣立てを早急に固めないと、再び政権を揺るがす事態にも発展しかねない。
 月末にはカナダで、G8、G20サミットという首脳外交の舞台も控える。
 今後の経済財政運営の基本となる成長戦略と中期財政フレーム、財政運営戦略は月内の策定に向け、大詰めの時期を迎えている。参院選に向けたマニフェストの練り直しも急務だ。
 次々と直面する政策課題を、いかに的確に着実に処理していくか。かぎを握るのは、菅新首相を支える官邸中枢の顔ぶれや、各閣僚以下政務三役らの総合的な「チーム力」だ。
 それをうまく築き上げることができるかどうか。菅政権が久々の本格政権として安定した政策遂行に取り組めるかどうかは、まずここで試される。
 菅氏は内閣の要となる官房長官に仙谷由人国家戦略相の起用を決め、党務を担う幹事長には枝野幸男行政刷新相をあてる方針だ。「脱小沢」の決意の表れだろう。と同時に人事には政策への精通や実行力、官僚の掌握力など多様な力量が考慮されなければならない。週明けの組閣が菅政権の将来を左右するといって過言ではない。
 ■「政策一元化」の実を
 鳩山政権で失われた政策実行力や統治能力を取り戻すには、「政策決定の一元化」の立て直しも急務だ。
 菅氏は小沢氏が廃止した政策調査会を復活させる意向を明らかにした。
 政策をめぐり、政府だけでなく与党内でも闊達(かったつ)な議論が行われ、政策に反映されるのは当然だ。そもそも政権奪取前の構想では、党政調会長が国家戦略相を兼務し、党幹事長も入閣することにより、一元化の実をあげることになっていた。組閣と党役員人事という構想実現の好機を逃してはならない。
 社民党の離脱で揺らいだ連立の枠組みをどうするかも考えどころだ。
 菅氏は国民新党代表の亀井静香郵政改革相と会談して連立継続を決め、郵政改革法案の速やかな成立で合意した。民営化の方向を根本的に見直す法案を乱暴に扱ってはいけない。廃案にし仕切り直すべきだ。
 重要な政策課題をめぐって、連立相手の主張をどこまで受け入れるのか。連立解消の分岐点はどこか。政党間協力や国会での合意形成の新たな手法を工夫しつつ、再考すべきだろう。
 参院選は民主党政権9カ月の中間評価とともに菅政権に対する事実上の信任投票になる。失敗を反省し、生まれ変わった姿を国民に見せられないと、厳しい審判は避けられまい。
 分かっていてやっているのか、本当に舞い上がってしまっているのか…。
 ここまで舞い上がられると「後期鳩山」政権の担い手としての新首相による内閣って一面を忘れてしまいそうになるから不思議なもんだ。新首相も舞い上がってそうだしなぁ。

 ここ数日で完全に悪役になったあの人は…。

「選挙勝てば先頭に立つ」=9月の代表選に出馬?-小沢氏 (時事ドットコム)
 民主党の小沢一郎前幹事長は4日夜、党岩手県連の集会に寄せたビデオレターで、「参院選に勝利して政権を安定化することで、本当の意味の改革が実行できる。そのときに、まさに自分自身が先頭に立って頑張ってまいりたい」と述べた。9月の党代表選に自ら立候補する可能性を示唆したともとれる発言で波紋を広げそうだ。
 集会では、衆参両院の本会議で菅直人代表が新首相に指名された直後に、ビデオレターが収録されたと説明された。
  また、小沢氏は同日夜、都内で開かれた自身を支持するグループの会合であいさつし、代表選で樽床伸二衆院環境委員長が129票獲得したことについて「私は立場上、動けなかったが、次につながる良い数字だ。あと90(票獲得)で首相が取れた。90なんて難しい数字じゃない」などと語った。(2010/06/04-23:45)

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